クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「ダメだ~合コン全敗……全ての希望は消え失せた……」
いつもの休憩室でのランチタイム。魂が抜けたような虚ろな目をした富永先輩は、「リア充爆発しろ」「カップルテロしてやる」とか、ぶつぶつと不穏な言葉を口にしてた。
一方で、立ったままの加藤さんはスマホを手に妙に爽やかな笑顔で髪の毛をかきあげる。
「ん~23日のデートはミキちゃん、カオリちゃん、さおりちゃんと。24日はミコちゃん、ゆかりちゃん、あきこちゃんと。25日はナナちゃん、マリちゃん、ひとみちゃん、リマちゃん、サオリちゃんとかぁ~いや~モテる男は辛いね! 身体が二つ欲しい……いで!」
「やかましい! モテ自慢するならよそでやれ! 舐めとんのかゴラァ」
「ちょ、富永さん。落ち着いて……いだだだっ!」
加藤さんの耳と頬が富永先輩により容赦なくつねられ、涙目の彼に諌められても逆効果。先輩はますますヒートアップしていった。
「ゆ、ゆるひてくだひゃい!」
終いには唇まで摘まんで引っ張られ、整った顔が台無しに……これで営業のヘルプに行けるのかな? なんてちょっと心配しながら食べ終えたランチボックスをしまおうとしてると、目の前に陰が出来て顔を上げれば。伊藤さんがいつの間にか立ってた。
「やあ」
「あ、どうも」
軽く手を挙げられてペコリとお辞儀を返せば、彼はにこやかに私に話しかけてきた。
「加納さんはいつもここでお昼を食べてるの?」
「あ、はい」