クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
近ごろなぜか、伊藤さんは機会があると話しかけてくる。
大概はよくある世間話程度であまりプライベートを訊かれることもないから、私も少しずつだけど緊張が解けてきてた。
営業の中でも成績優秀な彼は、さすがにトークが上手くて。気がつけば笑ってることも多い。最初は異性だから苦手意識はあったけど、今では葛城さんと加藤さんに続いてちょっとだけ気を許せる人になってた。
とはいえ、葛城さんに比ぶべくもないけれど。
「今度、一緒にお昼食べてもいいかな? あ、もちろん自分のは自分でちゃんと用意するから」
頬をカリカリと掻く加藤さんは、遠慮がちで決して押し付けがましくない。こちらの都合を最優先に考えてくれているから、そこまで言われて断るのは非情かもしれないな……とない頭で一生懸命考えた。
「あ、はい……私でよければ「加納ちゃあああん!」
なぜか、富永先輩が私にガバッと抱きついてきた。
「加納ちゃん! 慰めて~可哀想なアタシを慰めてよぉ~シクシク」
「ちょ、富永! おまえいきなりなんだよ。今、大切なところ……」
伊藤さんが抗議のための声を上げたところで、富永先輩はぎろりと彼を睨む。
「なんだ、伊藤。あんた居たの?」
「居たの、じゃない! せっかくオレが加納さんと約束」
「あ~聞こえな~い! リア充の声なんて~ぼっち女には聞こえませ~ん」
わざとらしく耳をほじるふりをしながら、富永先輩は伊藤さんにそんな言葉を放った。