クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



「そうだ、伊藤! アンタ、今晩アタシに付き合いなさい!」

「は? いきなりなんだよ。また男にフラレたのか?」

「それ以前の問題だっつーの! とにかく、今晩は飲むよ~やけ酒だから。付き合いなさい!」

「お、おい。今日は22日……オレにも予定が」

「アンタに拒否権はない!」


がしっっ! と音が聞こえそうなほどしっかりと、富永先輩は伊藤さんの腕を掴みふふふ……と良からぬ笑みを浮かべた。


「リア充め……ぼっち女の恨み思いしるがよい!」


伊藤さんが真っ青になったのはたぶん、富永先輩の顔を見たから。どんな表情をしてたかは……ちょっと怖くて見たくないです。


「ははは、何だかんだ言って富永と伊藤って仲が良いなあ」


加藤さんは朗らかに笑うけど……何だか恐ろしい未来を垣間見た様な気がしますよ。


ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人を見る加藤さんが、ポツリと言葉をこぼした。


「……葛城課長、たぶん満更でもないと思うんだよね」

「え?」


勉強の為に経済新聞を広げようとした私は、加藤さんの発言の意味がわからなくて思わずそちらを見た。彼は私を見るでなく、違う場所に目を向けて言葉を続ける。


「葛城課長……あんまり家族に縁がない人だから……さ。加納さんが多少わがまま言ったからって、嫌ったり呆れたりはしないってこと」

「……」


それを聞いて一番に感じたのは、なぜという疑問。


会社の部下に過ぎないはずなのに、どうして加藤さんは葛城課長のプライベートをそこまで知ってるんだろう?


葛城課長の性格から言えば、本人がわざわざ明かすとは思えない。


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