クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「あの……それはどういうことですか?」
「どうなんだろうね?」
加藤さんはそれだけ告げると、にっこりと笑って唇に指を立てた。
「これ、ぼくが言ったって内緒な。頑張ってる加納ちゃんに、ぼくからのクリスマスプレゼント。後は自分で考えてみて」
あと、一つ言えることはと彼は付け加えた。
「謙虚や遠慮は時には害にしかならない。欲しいものがあるなら、自分から手を伸ばさないと手に入らないからね」
パッチリとウインクした加藤さんは、それじゃあ仕事仕事! と両手を挙げて伸びをした。
お先に、と去って行く彼の最後にくれた言葉は、ズシンと胸に重く響く。
“欲しいものは自分から手を伸ばさないと手に入らない”――解っているようで解っていなかったことに、頭が殴られたような衝撃を感じた。
「……………」
周囲に誰も居なくなった頃を見計らい、スマホを取り出して画面を見つめる。
一度たりとも着信もメールもメッセージもないけど。使い方は葛城さんが何日も掛けて丁寧に教えてくれてたから判る。
画面をタップしてメッセージを作成する。
書いては消し、書いては消し。を何度繰り返しただろう。バカみたいな時間を掛けて入力をした文章は……
“くりすます·いっしょはだめですか”
というつまらない一文。
意味不明過ぎる文字を書き直そうと修正しようとしたのに。いつの間にかそのメッセージが送信され、自分でもわかるほど血の気が引いて顔が青ざめた。