クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~


だけど。


ピロン、とスマホから音が立って、驚きのあまりに身体が跳ねた。私が送ったメッセージの反対側に、“葛城さん”と頭に書かれた吹き出しのようなメッセージが表示された。


“今日は残業なしにする。終わったら待ってろ”

「……!」


まさか、こんな拙いメッセージに返信があるなんて。信じられなくて、スマホの画面まじまじと見てしまう。


今、葛城さんは誰も居ないフロアで仕事中。私が作った野菜サンドイッチを片手に。


最近、彼はちゃんとご飯を食べてくれる様になった。男性にしては小食であまり量は食べないし、感想もないけれど。それでもやっぱり嬉しいし励みになる。


そして、こうやって少しずつ意志疎通を計ってくれる。私はただのペットだけど、その気遣いでしあわせを感じる。


「えっと……、わ、かりました。ちかのちゅうしゃじょうでいいですか?……と、これで良いかな?」


スタンプツールがあるみたいだけど、仕事中の彼にあまりふざけた様なものは送りたくない。


送ってすぐにメッセージが返ってきて、“地下は寒い。7時には終わるから、カフェテリアで待ってろ”


なんて。さりげなく優しさを感じるメッセージに、嬉しくなって思わずスマホを胸に抱きしめる。


バカみたいだけど……こうやって自分の身を案じてくれる人がいる。そのしあわせを噛みしめていると、ふと強い視線を感じる。


誰だろう? と肩越しに振り向けば……そこに居たのは、前に地下駐車場で葛城さんにフラレた桜井のお嬢様。


彼女はなぜか腕を組んで私を睨み付けてくる。なんだろう?とじっと見ていると、ふんと鼻を鳴らして立ち去って行った。


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