クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



予告通りに葛城さんは残業なしにしたため、営業事務課ではかなりの修羅場が繰り広げられた。明日の23日から3日間連休だから仕事を残す訳にはいかない。以前は三辺さんがサポートしていた部分は、みんなでカバーしあってる。


私も必死にパソコンや書類と向き合い、みんなのサポートや補助をする。まだまだ三辺さんの十分の一もこなせないけれど……。何とか仕事を終えることができてほっとした。


そして、定時になって先に上がった私はカフェテリアに向かう。なるべく目立たない奥まった席で、備え付けの雑誌を広げて時間を潰した。


(そういえば……こうやって待ち合わせるなんて初めて)


そう意識してしまうと、何だか落ち着かない気分になる。そわそわと何度か時計を見ながら、雑誌を読もうとするけれど内容が頭に入らない。

ココアがすっかり冷めきったころ、ようやく葛城さんはやって来たけれど。どうやら少々トラブルがあった様子。


ガラス張りの向かい側に見えたのは、やっぱりあの桜井のお嬢様で。彼女は葛城さんにすがり付くように見上げていたけれど。彼は、それを振り切り厳しく冷たい眼差しで何かを言う。


社内のカフェテリアだから当然、数多くの社員の目がその出来事を見てる。けれど、葛城さんがその程度で怯むことはない。彼はすっぱりとお嬢様を振り切り店内に入ったものだから、予想以上に注目を集める形になってしまってた。


(どうしよう……)


有能な若き課長とただの新入社員。社内とはいえ二人きりで待ち合わせしてた……なんて知られたら葛城さんの評判が。そう思うのに、彼はまったく気にする様子もなく私に声を掛けてきた。


「待たせたな、行くぞ」



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