クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「ごめんなさいね、急にお邪魔してしまって」
にこやかにキッチンに立つのは、佐藤ご夫婦の奥さん。旦那さんは黙ってダイニングテーブルにお皿を並べてる。
私と言えば、動こうとすればまず葛城さんが飛んでくる。キッチンで手伝おうとすれば、彼に抱き上げられ強制的にソファに逆戻り。文句を言おうとすれば、葛城さんはキスで言葉を封じ込めてきた。(人前なのに!)
だから、仕方なくチョコを遊び相手に暇つぶしをしているけれど。
葛城さんと言えば、真剣な顔で奥さんのお手伝いをしてる。その姿はさながら本当の親子みたいにほのぼのとしたもので。私も強く邪魔はできない。
なぜこんなことになったかと言えば、葛城さんがクリスマス一緒にどうですか? と佐藤さんご夫婦に声を掛けたのが切欠。最初は遠慮してたご夫婦だけど、葛城さんが今日のために何かを作ろうとして……レシピ通りにしたはいいけど、失敗続き。
やむなく佐藤奥さんに頭を下げたところで、ちょうど良いからご一緒にという話になったみたい。
正直な気持ちで言えば、葛城さんとチョコとで過ごしたかったけど。これだけたくさんの人と過ごせるクリスマスはもう機会が無いような気がして。動けないごとに申し訳なく思いながら、何だか子どもみたいにわくわくしてきた。
過保護なまでに私を働かせようとしなかった葛城さんだけど、クリスマスケーキだけはどうしても譲れずにみんなと一緒に作った。
ケーキのデコレーションでクリームを塗る時やフルーツを飾る時。葛城さんが子どもみたいに愉しそうだったから、彼に全面的に任せる。
出来上がりは決して綺麗とはいえなかったけれど。彼の気持ちがこもってたから。私にはどんな高級なケーキよりも素敵に見えた。