クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
あなただって罪を犯したくないでしょう? と、いっそ優しいと言える口調で囁かれる。
何も、言えない。あまりにショック過ぎて、言えるはずもない。
気がつけば、車から飛び出して無我夢中で走ってた。どこをどう走ったのか、辿り着いたのはもはや更地になったアパート跡。
その前で膝を折り、項垂れた私の頬から涙が流れる。
それに呼応するかのように、鈍色の空から冷たい雨が降り始めた。
私と、葛城さんの出会いを再現するように。
ハラリ、と手にした写真が地面に落ちる。
あの男性――「彼」と幼い葛城さんの写った親子写真が。
不倫……不義の子と呼ばれ続けた私。決して父を明かそうとしなかった母。大切な人と紹介されたのは葛城さんのお父さんで。
もっと早く気づくべきだった。
お母さんの写真を見つけた時に。
彼と同じミントの香りを感じた時に。
父が女性と付き合ってたと葛城さんが話した時に。
……私は……その結果出来た子どもなんだ……。
私の泣き声が、冷たい空に空虚に吸い込まれていった。