クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~





「お家賃が三万円以内ですと、かなり郊外にならないと難しいですね。あったとしてもかなりセキュリティが甘い1Kになりますが……」

「それでも構いません。探してもらえますか?」

「わかりました。ご希望の条件に近い何件かをピックアップしますね」


不動産屋さんの店員さんにかなりの無理難題を押し付けながら、希望に近い物件を幾つか紹介して貰えた。


築何十年の木造とかかなり郊外で不便になるけれど、もともと住んでたアパートもそんなものだった。だから、この際贅沢は言ってられない。


葛城さんから離れるためなんだから……。


年が明けて仕事も始まり、松ノ内も終わった頃。寒さも本格的になって、肌を突き刺す様な寒風に身を縮める。


自転車での通勤はつらい。葛城さんが送迎してくれると言ってくれたけれど、断ってずっと自転車で通ってた。


佐藤ご夫婦にプレゼントして頂いた赤い手袋を見ると、心がぽかぽかとあたたかくなる。


クリスマス以来お二人との距離はぐっと近づいて、本当の親のように私たちをお世話をして下さる。


どうも、奥さんは私と葛城さんが結婚すると誤解をしているようだけど。そんなことは天地がひっくり返ったってあり得ないのに……。


もしも血のつながりがなかったとしても、葛城さんが私を選ぶことは永遠にない。


歩くたびにシャラリ、と肌に当たる感触。体温に馴染んだそれは、葛城さんが私の首輪にとプレゼントしてくれたもの。




“おまえが逃げないように、縛りつける首輪だ……オレの側からずっと離れるな”


そう、言ってくれたけれど。

きっとあれは、私がペットだからこその言葉で。


私が女性として、人間として必要とされたからじゃない。


勘違いなんて……しない。


だからこそ、早く離れなきゃ。彼がいとおしそうに他の女性を見る姿を毎日見なきゃいけないなんて辛すぎるから。


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