クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「そういえば、情報処理技術者試験受けるの?」
熱心にテキストを眺めていると、加藤さんが話しかけてきた。
「あ、はい。パソコンを扱うなら取っておきたいかなって……」
葛城さんのそばにいる唯一の方法は、仕事で無くてはならない存在になること。パソコンやコンピュータを扱うなら最低限のスキルを持つことを証明する、ITパスポート資格を目指して勉強してた。
資格取得はあくまでもひとつの目安に過ぎないけど、勉強するだけでもいろいろと知識が増えて役に立つ気がする。
(早く葛城さんの力になりたいから……)
「それならうちの会社には資格取得の補助制度とかあるよ。資格取れば手当てとかつくし」
「そうなんですか」
加藤さんは「ミキちゃんにフラれた~」と笑いながらも詳しいことを教えてくれた。
だけど私は、彼が葛城さんの事情を知っていることがどうにも気になる。
彼なら……もしかすると葛城さんの父親の事情も知ってるのかな?
ギュッ、とテキストを捲る指に力が籠る。
(恐れて逃げてばかりじゃダメだ。私は知らなきゃいけない、真実を。幾ら怖くても……)
私はパタンと本を勢いよく閉じると、加藤さんに向かって訊ねた。
「すみません、資格試験についてもっとお話を訊きたいです。今夜、お時間ありますか?」
勢い込んで口にしてから、後から膝が震えた。まさか苦手な男性を自分から誘うなんて。
だけど、私は知りたい。知らなきゃいけないんだとの強い思いに突き動かされる。
「いいよ。じゃあ待ち合わせしよっか」
スマホを持ち上げながら加藤さんは軽く応じてくれて、ほっと胸を撫で下ろした。