クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「お待たせして申し訳ありませんが、主人も間もなく帰って参りますわ。それまでこちらでおくつろぎになってくださいな」
「では、お言葉に甘えて」
応接間だろう広いお部屋に通され、どっしりと存在感のあるソファに三人並んで座る。よく手入れされた歴史ある調度品を見るだけで、何だか勝手に体が震えてきた。
制服を着たメイドさんがワゴンで運んできたお茶器で紅茶を淹れ、テーブルに置いてくださる。その動きすら無駄なく洗練されていて、「あ、ありがとうございます」と思わず頭を下げた。
ふ、と隣で小さく息を吐いたのは三辺さんだろう。笑われた、と知って顔から火が噴き出しそうになった。
それから間もなく葛城家の現当主である勇人(ゆうと)さんが、ダブルスーツ姿で現れたけれど――彼を見た瞬間にドキンと心臓が跳ねた。
古い記憶よりも年を重ねて髪に白いものが混じり、シワは増えているけれど。それでも切れ長の瞳とキリリとした眉やシャープな顎のラインは変わらない。
お母さんが最後に愛したひとそのものだった。
そして、遅れた非礼を詫びる挨拶の最中の勇人さんは……
私に視線を向けた瞬間、わずかにだけど目を見開いた。