クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



「この度の縁談、如月の方と縁付くことが出来て誠にありがたく思います」

「こちらこそ、ですわ。葛城とはもともとご縁がございますもの。よりいっそう深く繋がりを持てて嬉しゅうございます」


曾おばあさまと勇人さんの長い挨拶の間、私と三辺さんはただ黙って大人しくしてる。向かい側には上座に勇人さん、弥生さん、そして長男だろう隼人(はやと)さんが順に座ってる。

隼人さんは勇人さんに似てるからか、弟である葛城さんとはあまり似てない。だから、葛城さんはお母様似なんだ……とぼんやり思った。


自分に似てないからと息子を不義の子だと遠ざけた勇人さん。弥生さんも体が弱い末っ子を放置して……きょうだいも、葛城さんと関わろうとしなかった。


(どうして……)


愛想よく微笑む弥生さんは、優しそうな母親というイメージを抱きそうになるけど。だからと言って我が子を突き放した事実は変わらない。


でも、と私は思い直す。


勇人さんはすごく見目がいい。背が高く美形で……今でも60過ぎにはとても見えない。息子さんと並んでも兄弟と通用しそうなほど。


おまけに葛城家の当主という身分と社長という地位。女性を惹き付ける要素は十二分にある。彼もそれを使い、女性とのお付き合いをしてた……。妻がいながらに。


つまり、浮気だ。


なんだかんだ言って弥生さんは、夫の度重なる浮気に苦しめられてきた。彼女や息子さんたちは被害者でもあるんだ。


そして……私の母は勇人さんの相手の一人。


私は加害者の娘でもあるから、本当ならこの場にいるのは図々しいし、そんな資格はないのかもしれない。


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