クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
けれど、意外な助け船が葛城側から出された。
「……そうか。智基はSS商事で相変わらず頑張っているのだな」
小さいけれど皆にはっきり聞こえるように呟いたのは、勇人さん。妻である弥生さんが呆気にとられている間に、彼は畳み掛けるようにこう告げた。
「……夕夏さんでしたね。よかったら智基の様子を聞かせてもらって構わないだろうか?」
勇人さんの目がこちらに向けられた、と理解するまで数秒かかって。それでも怒ることなく勇人さんは待っていてくれたから、ハッと我に返りコクコクと頷いた。
「は、はい! 私でよければお話しさせていただきます」
「あなた、今日は結花さんのご挨拶ですよ。そのような関係ないことは……」
弥生さんが眉を寄せてたしなめようとするけれど、勇人さんは妻に目を向けずきっぱり言い切った。
「関係ないわけないだろう。智基は私たちの息子には違いないのだからな」
「……」
弥生さんはそれ以上反対するのを諦めたのか、口をつぐむ。
そして、勇人さんはいきなり立ち上がって私を見下ろした。
「ならば、夕夏さん。今ちょうど椿が見頃でしてな。少々寒いが庭をご案内しながらお話しましょうか」
勇人さんがメイドさんに命じて用意してくれた厚手のコートをお借りして、彼と二人で庭に出た。