クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
静まり返ってしまった後に、頬に感じたひんやり冷たい空気のおかげか少しだけ冷静さを取り戻した。
葛城さんの実家でこんなに感情的になってしまうなんて……あまりの恥ずかしさに、頬に熱が集まる。両手を握りしめ、それに視線を落として何とか言葉を絞り出した。
「……あの……ですから……いくら血縁や家族でも……お互いにすべてを理解できないのはわかっています。
簡単に許せない気持ちや……理解したくない気持ちも。
でも……私のように後悔したりして欲しくなくて。
ほんのちょっとでもいいので、お話をすればまた違って見えてくるかもしれないですから……」
肉親だから、家族だから絶対に仲良くできる。お互いに理解しあえる……何をされてもすべてを許すべきだ。それはかなりごう慢な考えだと私は思う。
それはしあわせに暮らしてきて、何も知らないから言える無責任な言葉だ。
現に葛城さんが幼い頃に受けた仕打ちは……到底許せるものでないと思う。過去のすべてを水に流して仲良くして……だなんて。言えるはずがない。
けれど。
「……簡単に、許さなくていいと思います。だけど……」
ゆっくりと顔を上げて葛城さんを見た私は、手袋を脱いでそっと彼の手に指先で触れる。そして、もう片手で勇人さんの手に触れた。
「……あたたかい、です」
そして、呆気に取られたひとたちの手を引いてそっと触れさせる。葛城さんの指先が、勇人さんの指先に触れた瞬間ピクリと跳ねた。
「勇人さんは、まだ生きてます……葛城さん、あなたも」