クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「……」
思考が停止して、ただバカみたいに葛城さんを見上げてた。それなのに、彼はまったく怒ることなく私を見てる。
どれだけ時間が経ったのか。1月にしては暖かな風がふわりと頬を撫でて、ハッと我に返る。
「す、すみません……あの……私」
「いい。強引に誘ったのはおれだからな。
今日は遠慮などするな。好きに、思ったままにしろ」
「好きに……ですか?」
葛城さんの発言の意図が読めなくて首を傾げると、フッと彼の口元が緩む。もしかしたら笑われた?
(早く理解しなくて……ば、バカだとか思われたかも……)
恥ずかしくてまた俯きかけた私の顎に、彼の指が触れる。そして、自然と視線が上向きにさせられた。
「俯くな。おれはおまえをバカにしたり笑ったりはしない。自信がないだとか、これが正しいのだとか、余計なことは考えるな」
「……葛城さん」
「今日は、おまえのやりたいことを言え。遠慮するなら今すぐホテルに行き、抱くぞ」
「……!」
ほんの数センチと離れてない距離まで顔が近づき、囁かれるように脅される。好きな相手にそんなことを言われたら……落ちるしかないけれど。
「……で、でも……」
「でも、はない。遠慮するなと言っただろ? でないと……この場でしてほしいのか?」
彼の背中に添えられた手が、いたずらな動きを仕掛けてくる。その馴染んだ仕草に、本気だと悟るしかない。
「わ……わかりました」
震える声で答えるのが、精一杯だった。