クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~




「大丈夫ですか?」


ちょっと痛むのか指先を気にする葛城さんは、「これくらい平気だ」と言うけれど……血がにじんでるし、それに管理されてはいても動物に噛まれたなら放っては置けない。


「ダメですよ、動物に噛まれた痕を放っておいたら。人間とは違う菌を持ってるんですから。はい、まずはあちらで傷を洗いましょう」

「お、おい」


私が背中を軽く押すと、諦めたのか葛城さんは素直に従ってくれる。広場に近い休憩スペースに設置された水飲み場で傷を洗うと、そばにあるベンチに座って携帯用の消毒液を取り出した。


「ちょっとしみるかもしれませんが、我慢してくださいね」

「……ああ」


消毒した時は微かに眉を動かしたけれど、傷はそんなに深くなさそうでよかった。消毒した傷に絆創膏をしっかり貼っておしまい。


「気になるようならネットで押さえるか包帯でしっかり固定しましょうね」

「そこまで大げさにしなくていい。利き手ではないのだし、明日からの仕事に影響はないだろう」


苦笑いを浮かべた葛城さんの眼差しはやっぱり優しくて。ドキッと心臓が跳ねる。


包み込まれそうな穏やかさ……落ち着きない気分にさせられるのに、どこか安心できるなんて矛盾なのに。ずっとこうして彼のそばにいたい、なんて願いが頭をもたげそうになって。自分を叱りつけた。


(ダメ、ダメ! 葛城さんにはもっと相応しいひとがいるんだから。バカな望みを持っちゃいけない)

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