クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



「そういえば、腹は減ってないか?」

「え?」


葛城さんから訊かれて、そういえば朝から何も食べていないことを思い出したせいか、急にお腹が空いてきた。


朝は葛城家に行く緊張があってほぼ食べられなかったし、お昼は三辺さんとセレクトショップで。とてもそこまで考える余裕がなかった。


お腹が空いたなんて自分から言い出すのは恥ずかしい。でも、今日は素直になれと葛城さんも言ってくれた。なら、と思い切って頷く。


「はい。お腹……すきました」

「なら、なにか食べるか」


葛城さんに促されてベンチから立ち上がり、後に続いて歩こうとした瞬間……走ってきた子ども数人に思いっきりぶつかられ、体がよろめいた。


「!」


前に倒れかけた私を咄嗟に助けてくれたのは葛城さんで。彼は私を片手で抱き上げた後、すぐ走り去ろうとした子ども達をひき止め注意をした。


「危ないだろう。ちゃんと前を見て走りなさい。それと、こういう時に何と言えばいいか解るか?」

「……ごめんなさい」

「いいよ。今度から気をつけてね」

「はぁい」


素直に謝ってくれたから、私は苦笑いで許し子ども達を解放したけれど。葛城さんはどこか不満そうに見えた。


「親にもきちんと話をすべきではないのか? 公共の場での躾がなってない」

「葛城さん……そこまでしなくてもいいじゃないですか。まだ5、6歳の子どもですよ? こんな場所に来たらはしゃぐのは自然なことです」


彼だったら自分の子どもにも厳しそうだな、なんて胸が痛い想像しながら話すと、彼は眉を寄せながら「そういうものか……」と腕組みをして真剣に悩んでたから。ちょっと可笑しく思えました。


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