クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「正直な話、子どものことはよくわからない。間近にいなかったせいもあるし、避けてきたという負い目もある」
「そうなんですか?」
「ああ。自分の子ども時代と言えば、体が弱くて寝ていたか勉強してたか本を読んでた記憶しかないから。子ども、というものがどんなものか……あくまでも本やメディアから得た情報しかないが。
だが、これからは必要になるからもっと勉強をし経験を積まねばならないな」
ドキッと、今までにないほど心臓が跳ねた。葛城さんのその発言は……まるで、これから家族になるひとの存在を暗示しているようで。
そのひとと、子どもを持つかもしれないんだ……。
つまり、彼は前向きにしあわせになることを考え始めてる。
「……そう……ですか」
声が震えないようにするのが精一杯で、俯いて地面を見る。彼の顔を見るのが怖い……。彼のしあわせを願っているはずなのに、いざ別のひととしあわせな家族を築くと宣言されたら、やっぱり胸が抉られそうなほどに痛む。
ダメだ、こんな場所で泣いちゃ……
まぶたをギュッと閉じて頭を軽く振った後、無理やり口元を吊り上げて笑顔を作ろうとする。
だけど……
予想外の動きを、葛城さんがしてきて頭が真っ白になった。