クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「来週は映画だが、次は遊園地に行くぞ」
葛城さんがわざわざそのひととのデートの内容を知らせてくるなんて……私に諦めろ、と言っているも同然だ。
「そう……ですか。なら……近場で調べておきます……」
呼吸をするごとに痛みが大きくなる。苦しい胸を押さえようとして、まだ彼の腕に捕らわれたままと気付いた。
「葛城さん……こ、こんなことはもうダメです」
「こんなこと?」
思い切って言葉にしたのに、葛城さんはまったく解っていなさそうで。私はまだ言わせるの? と微かな怒りを覚えながら彼を諭した。
「ですから……こうやって抱きしめたり、です。わ、私はあなたにとってただのペットなんですから……あなたの大切なひとに見られたら要らない誤解されてしまいますよ。
これから恋人に……いいえ、家族になるひとに……こんな場面を見せたらとんでもないことになってしまいます」
だから、離してください。当たり前の要求をしたのに、葛城さんは
「断る」
ときっぱり言い放った。
「なぜ、おれが赤の他人に遠慮する必要があるんだ?」
「か、葛城さん! ですから……あなたの恋人が……」
「関係ない。そもそも、おれの恋人とは誰だ? ありもしない存在にいちいち気を揉むな」
そう言った葛城さんは、いきなり私の耳元に唇を寄せる。彼の微かな息遣いを感じて、ピクリと体を震わせた。
「……言ったはずだ。今のおれはおまえだけだ、と。そもそもおれは、複数を相手できるほど器用な男ではない」