クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
カツサンド……と聞いて、ドキン、と心臓が跳ねる。
カツサンドを作ったのは2ヶ月前。ランチ用にと用意した一回きり。食べてもらえたかすら知らない。
あの時、三辺さんからの差し入れに紛れ込ませて渡したけど。きっと彼女からだと思い込んでたはず……なのに。
「……な、なぜ……カツサンド……ですか?」
「おれが無理に三辺から聞き出したんだ」
「三辺さんに?」
ああ、と答える葛城さんは手元のサンドイッチを眺めつつ、どこか遠くを見ているようだった。
「大学時代の後輩である三辺は、おれを気遣ってか学生時代からたびたび差し入れをしてくれてたんだ。
だから、そのレパートリーにはないメニューですぐ彼女とは違うと判った」
「……」
三辺さんとの昔話をする葛城さんは昔を懐かしんでいるのか、優しい目をしてる。そのことに胸がざわつくけど、今羨んでも仕方ないことと自分を無理に納得させようとする。
けど、ばかな私はついつい余計なことを無意識に口に出してしまってた。
「そうですか……葛城さんは三辺さんと仲がいいですよね。やっぱり……彼女はあなたにとって大切な……」
言いかけて、はっと慌てて口をつぐむ。手のひらで口を押さえたまま、居たたまれなくて俯いた。
(ば……ばか! なんでこんなことを言っちゃうの。こんな……嫉妬なんて……する資格もないのに)