クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
南国産の木材が使われた店内はオレンジ色の間接照明で照らされ、ぬくもりを感じさせる。あちこちに植物が置かれ落ち着いた雰囲気に、心が安らいだ。
お座敷とテーブル席があったけれど、葛城さんは迷わずお座敷を選択。隣とは衝立で仕切られていて、人目を気にする必要がなくほっとした。
「オーダーは今日のオススメでいいよね?」
「ああ、それで構わない。夕夏もいいか?」
ユウキさんに注文を訊かれて葛城さんは即答したけれど、内容もわからずにいいのかな? と疑問に思えた。
「あ、あの……オススメって……内容はなにかうかがっても?」
私が疑問点を口に出すと、ユウキさんはおや? と不思議そうな顔をした。
「どうして? アレルギーでもあるのかな?」
「い……いえ、私は大丈夫なんですが……その……」
これは言って良いのかわからずにちらっと葛城さんを見る。私の視線に気付いた彼は、“何でも言っていいぞ”と言いたげな優しい目をしたから。思い切って口にした。
「あの……か、葛城さんの食べられないものがあったら……とても申し訳ないと思いますから」
「おや、おやおや~?」
私の言葉を聴いたユウキさんは、途端に口元を緩めてニヤリと笑った。
「智基、夕夏ちゃんにご飯作ってもらってんだ! このしあわせ者め~ぼっちに当てつけるために来やがったか、この!」
なぜかユウキさんは葛城さんの肩をばんばん叩いてて、葛城さんはやめろと不機嫌になった。
「夕夏を勝手にちゃん付けするな」
「お~いっちょまえに嫉妬か~独占欲強いねえ」
からから笑うユウキさんは……葛城さんの、部下を震えさせる絶対零度の冷たい視線も何のその。さすがに10年以上友達なだけあるって感心しましたよ。