クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
冷えた体にゆっくりとあたたかさが染み渡る。ほっと息を吐くと、向かい側に座った葛城さんが口を開いた。
「……今日……10年ぶりくらいに父と話したよ」
「……あ」
そういえば午前中に葛城さんが実家にやって来ていた、と思い出した。
「あ……あのごめんなさい……勝手にあなたのご実家に行ったりして……」
「三辺の挨拶に同行したのか?」
葛城さんは眉間にシワが寄っていて、あまり機嫌が良さそうに見えない。これ以上機嫌を損ねてはダメだ、と素直に認めることにした。
「はい……その……勇人さんやそのご家族に……どうしてもお会いしたかったので……」
「……まったく」
葛城さんは額に手をやって目を瞑ると、深く長いため息を吐く。それは心底疲れた様子で、罪悪感がキリキリと胸を締め付けた。
「本当に、ごめんなさい……私の勝手な思い込みだけで自分勝手な行動を……余計なお世話でご迷惑でしたよね」
「ああ、まったくだ……おれのトラウマをよくもああ易々と抉ってくれたものだ」
深く深く刻まれた眉間のシワが、彼の長年の苦悩を表していて。私は本当に余計なことをしてしまったんだ……と身を縮めるしかなかった。
「……そんなに簡単に許せるはずがないだろう。受け入れられるかと言えば“No”しかない。わかっているのか?」
厳しい声で咎められ、ただ消えそうな空気で「はい」と小さく返事をした。