クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~





「……さくらクリニック……ここか」


葛城さんの運転する車で病院に到着した時、不安に駆られて逃げたくなってた。


「私の知り合いが院長だから」と結花さんに紹介されたここは、内科の他にいくつかの診療科があったけど。循環器科なんかの科を見て、やっぱり病気の疑いがあるんだ……と怖くて仕方ない。


「夕夏、どうした? 気分が悪いのか?」


葛城さんが心配そうに私の顔を覗き込んでいるけれども、緊張して目を合わせられない。ばくばくと速くなる鼓動がうるさくて、体が震える。そのうちにぎゅっと胃が縮まり、吐き気が襲ってきた。


「……っ」

「夕夏!」

「すみませ……うッ」

「いい、体調が悪い時くらい遠慮するな。きちんと用意してあるし、汚しても構わない」


葛城さんは一時慌てていたけれども、すぐに落ち着いた様子で専用の袋を出してくれる。申し訳ない気持ちはあったけれども、どうにもガマンできなくて彼にお世話になった。


その後も彼はてきぱきと処理をしてくれ、ウェットティッシュで顔まで拭おうとするからさすがに奪って自分で拭いた。


「ほら。気持ち悪いだろうからとりあえずこれで口をゆすぐといい」


レモン果汁入りのミネラルウォーターまで渡され、アドバイス通りに口をゆすぐと少しだけすっきりした。


「……すみません、本当に。何から何まで……」

「いい。おれがしたくてしてるだけだから、遠慮などするな」


葛城さんに優しく背中をさすられたからか、少しだけ気分が楽になった気がした。


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