クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~




――そして、1年後の春4月。
私たちは桜の名所である河川敷に来ていた。


「こら、夕貴(ゆうき)。それは食べ物じゃないぞ」

「あ~ぁ、だぅう」


去年の秋に父親になったばかりの新米パパは、ようやくお座りできるようになった一人息子の扱いに苦戦中。


夕貴はハイハイも上手にできるから、目を離すとどこかへ行って何にでも興味を示すんだよね。


「夕夏、こいつ桜の花を食おうとしてるぞ! わ……待て、そっちにいくんじゃない」


お座りに飽きたらしい夕貴は、ハイハイでレジャーシートから出ようとしたから、慌てて智基さんが止めようとする。


「ワン!」


すると、チョコが夕貴の前に立って吠えてくれたから、彼の興味はチョコへ。


「わむ、わむ~」


夕貴は喃語(なんご)を喋りながらチョコを抱えると、わしゃわしゃ撫でる。そんな彼の蛮行にも、チョコは黙ってされるがまま。ほっとした智基さんは、夕貴を抱き上げた。


「まったく……可愛いものだが、本当に目が離せないな」


眉を下げて困り顔を作ろうとしてるけれども、口元が緩んでる。心底息子のことが可愛くて仕方ないんだ、と私の口元も綻んだ。


「仕方ないですよ。これからもっと体が成長していきますから。よっ……と」


満開の桜の下でせっかくだから、と作ったお弁当を並べようとしたところ――智基さんがそれを片手で止めた。


「いい。おまえは休んでろ……今が大事な時期なんだからな」
< 274 / 280 >

この作品をシェア

pagetop