クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



「ククッ……わかった。やりたいことを言ってみろ」


葛城さんから許しが出そうだから、気が変わらないうちにと急いで並べ立てた。


「あ、あの……お家のことはお任せください。一応一人暮らししてましたから、一通りのことはこなせます。あと、仔犬の面倒は私がみますから。それと働いてきちんと家賃を払わせてください。それから……えっと……」


一生懸命に考える。葛城さんは恩人になるんだから、それだけでは足りない。


「えっと……」


でも、私の貧弱な頭ではよいアイデアが浮かばない。ぐるぐる考えているうちに、疲れて眠くなってきた。


昨夜は面接の緊張でまったく眠れてなかったし、火事だのスリだのとんでもない目に遭い続けて疲労困憊のところを、思いがけず優しさに触れて。お風呂と暖房ですっかり暖まった身体と頭に強い睡魔が襲ってきた。

「とにかく……なにもしないのはいやです……」


眠くなる目を擦りながら一生懸命起きようと努めていたのに、葛城さんは私にブランケットを掛けてフワリと抱き上げてくれた。


「わかった、明日話そう。眠くなったなら素直に眠れ」

「ごめんなさい……」

「いい。もう眠れ」


額に柔らかな温かさを感じた瞬間、ストンと眠りに落ちていった。


まるで、揺りかごに包まれているような心地よさと安心感を感じながら。


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