クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
歓迎会だなんて予想外の言葉に意識がいってしまい、午後からはミスを連発してしまった。
その度に無表情の葛城課長から厳しい言葉をいただく。涙が出そうになるけど、元はと言えば集中できない自分が悪いんだから、とにかく一生懸命にパソコンを操作し続けた。
11月の日暮れは早くて、午後も5時を過ぎればあっという間に暗くなる。定時で帰る人たちを後目に、資料を捲りひたすらキーボードを叩く。数字を追って目が疲れた頃、チラリと時計を見れば既に8時近く。
(あ、そういえば仔犬は大丈夫かな?)
私も葛城さんもフルタイムで働く以上、まだ生後数ヶ月の仔犬をひとりきりで残すのは気が引ける。だから、葛城さんはメゾネットアパートで犬好きなご夫婦にお世話を任せてた。
旦那さんが定年退職後、二人だけでのんびり暮らすためと一軒家から移って来られたご夫婦で、持ち家はリフォームして長男夫婦に譲ったそう。
長男さんがアレルギーだったから飼えなかった犬を飼いたい。でも、ちゃんと飼えるか不安ということで。お試しというと語弊があるけれど、ちょうどいいタイミングで仔犬を預かるようになったということ。
毎朝のお散歩は私が行くけれど、午後のお散歩は旦那さんの担当。毎日ご夫婦でいい運動になりますよ、と朗らかに笑ってらした。
65歳をともに過ぎたご夫婦を見てると、お互いに口が悪く文句を言いながらも、なんだかんだと仲がいい。同じ夫婦でもこんなふうになれるんだ……と新鮮な驚きと、ちょっぴりとしあわせをおすそわけしていただいてた。