クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
「……誘ってるのか?」
「え? 誘う……って、どこにですか?」
私を見下ろす葛城さんに手首を掴まれたまま、不思議な問いかけに真面目に答えたのだけど。どうしてか、彼はプッと吹き出した。
「……いや、いい。そのうちわかるようになる」
そう言った彼はなぜか愉しげに見えた。仕事中はきつく結ばれる唇は僅かに開いて弧を描いているし、眉尻も下がって印象が柔らかくなってる。
そういえばメガネがないことと彼の服がルームウェアではなく、バスローブだと気付いた。どうやらお風呂に入ってきたらしく、僅かに髪が湿ってる。きっちりセットされた柔かな髪が自然に流れている様は、彼を若く見せた。
それと、お酒くさくない。
さっき葛城さんからは苦手なアルコールの匂いがして正直きつかったけれど、今はミントのような爽やかな香りがした。
彼の顔がとても近くにきてぼんやりとそんなことを思う私は、やっぱり鈍いというか呑気なんだろう。
「嫌か?」
訊かれて何のことかわからないまま、首を横にふる。
「大丈夫です。私は……好きなだけあなたに付き合いますから。好きなようにしてください」
決意を示すために、おずおずと彼の手に自分の手を重ねた。キュッと包むと、彼の大きな手がピクリと跳ねる。
「何をされたって……私はあなたを信じてますから」