クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
また、何かが口のなかに入ってきた。それが舌だと気づく余裕もなくて、必死に彼の腕に掴まった。
顎の裏や私の舌……いろんな場所を優しく撫でては、強弱をつけて翻弄する。慣れないキスに知らず知らず息が上がって、荒くなりそうな呼吸を懸命に抑えようとした。
こわい、と思う。
だけど、葛城さんなら。
彼だから、私はいい。
彼は、私がペットだから触れてくるのだと思う。
いくら鈍い私だって、恋人や夫婦でもないのにこんな行為をするのは間違ってると解る。愛情がないのにすることでもないと。
でも、それでもよかった。
彼が、私を必要としてくれるなら。
生まれてずっと片親で。5つでお母さんと死に別れて。それからずっと、本当の意味で必要としてくれるひとはいなかった。
人付き合いもへたで友達も恋人も居なかった私。
本当は、ずっと寂しかった。
誰かのぬくもりを感じたかった。
私が私だとまっすぐに見てくれる人が欲しかった。
ささやかなそんな私の願いを、この優しいひとは叶えてくれた。もしかしたら一生かなわなかった、他人には単純だけど私にはひどく難しい願いを。
だから……
ペットでも、いい。
私を、必要としてください。
そんな浅ましく虚しい願いを、彼に抱いてしまってた。