クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



“怖い”――。


追いつめられるたびに降り積もる未知の感覚に、慣れない私は怯えて震えるしかない。


葛城さんの指や唇一つでこれだけおかしくされて、これ以上どうなってしまうのかと怖さを感じた。


私だって最後までの経験はないけれど、この年まで生きればこの先がどうなるかくらいうっすらとは知っている。だけど、まさか自分がそんな経験をするはずがない、と諦めてきたから。話を聞く機会があっても半ば聞き流してた。


男性に対する恐怖心もあったから、そんな機会は訪れないだろうと。そんな過去の自分を怒りたくなった。


(こんなことなら、もっとしっかり聞いておけばよかった……)


友達はいなかったから、あくまでもクラスメートとかの話を漏れ聞いただけなのだけど。エッチの際にもいろいろあると、彼女たちは違いを語ってた。


(みんながみんな、こんなにドキドキしたり。戸惑ったり。怖さを感じるものなのかな?)

そんな思考も、直ぐに葛城さんの動きで中断される。


私は十分に追いたてられているのに、葛城さんは休む事なく指先と唇で私を翻弄する。わき腹をするりと撫でられただけで、身体が過剰に揺れてしまう。


けれど。今まで見たことがない彼の熱を帯びた眼差しと、男性ならではの色めいた空気に。私のなかで何かが動きだす。


彼が、私を欲してくれている――。


その現実に、くらくらとした様な陶酔を感じた。


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