クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
葛城課長は日中は何とか乗り切ったみたいだった。だけど、青かった顔が赤くなってるのは気のせいじゃない。
今現在金曜日夜の10時過ぎ。営業事務課のフロアには当然、私と葛城課長の姿だけだった。
「課長、ファイルの整理なら私もできますから任せてください」
「……いつまでいるつもりだ?それは良いから、早く帰りなさい」
「嫌です。課長が帰らない限り、私は絶対、帰りませんから」
駄々っ子みたいで恥ずかしいけれど、頭の悪い私はこれくらいしか思いつかない。部下を心配するなら自分も帰らなきゃという空気にさせること。
葛城課長は厳しいひとだけど、プライベートや健康に関しては柔軟性のある理解ある上司だ。そんな彼なのに自分に関しては無頓着過ぎる。
現に今だって瞳が潤んで呼吸がやや荒い。耳まで真っ赤で明らかに熱が出てるのに、頑なに認めようとしないんだから。
「数値の入力は私がしますから、決裁が必要なものだけを選り分けて……」
私がそう告げて書類に手を伸ばした瞬間、だった。私の手を阻止しようとしたのか、前屈みになった葛城課長の身体が突然クラリと揺らいだのは。
「課長!」
「…………」
幸い目の前に書類が積まれていたから、倒れたといってもさほど大したことはないかもしれない。
けれど、頭を打ってる可能性もある。現に彼は気を失ったのか苦しげな呼吸のまま目を開けようとしない。
「た、大変……すぐに連絡しなきゃ」
内線を取り、震える指先で呼び出したのは守衛室。緊急時はそちらへ掛けるように言われてる。
私が連絡してほどなく、体格がいい守衛さんが二人ほどやって来た。呼んだタクシーに運び込むのを手伝ってもらい、持ってきた膝掛けやマフラーで彼を保温する。そのままタクシーで夜間の緊急外来に駆け込んだ。