クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
私は床に落ちたブランケットを手に取り、まじまじと見つめる。私の肩に掛けたのが誰かなんて、他に一人しか居ないのだからすぐに解ってしまう。
「待て」
掠れた葛城さんの声が聞こえてすぐ、昨日より酷い咳が続いて私は彼のもとへ駆け寄った。背中を丸めて咳き込む姿は苦しそうで、私は躊躇いつつも彼の背中へ手を伸ばし、そこをゆっくりとさすった。
「咳止めをいただいてますから飲みますか?」
「いや、いい。薬は嫌いだ……」
ゼイゼイと苦しそうな呼吸を繰り返しながら気丈にそう言う彼は、心底嫌なのか口元を歪めて首を振る。
そして、ぽつりと溢した。
「……子どものころ……1ヶ月ほど入院したことがあって。毎日点滴と投薬の日々だったからな……」
「えっ」
小さく小さく紡がれた言葉は、ともすれば聞き逃しそうなほどにささやかな大きさの声で。だけど、私の耳にはしっかりと届いていた。
彼が、初めて自分の事を話してくれた――。
今まで、私は葛城さんのプライベートを何一つ知らなかった。彼自身が語らなかったし、話さないなら無理に訊くまいとさえ思って。
自分だってさほど親しい人にはあれこれ探られたくないし、知られたくはない。
だけど、葛城さんには構わないと思って。頼まれずとも私は自分のことを彼に教えてた。気のない返事ばかりで全く関心がないかと悲しくなったけれど。
今の今まで私に無関心だった葛城さんが、自分のことを話してくれた。たとえ熱で頭がぼやけていたとしても、彼ならうっかり打ち明けるとかしなさそうなのに。
だから、今は自ら進んで私に教えてくれたということ。ひいては少しでも私を認めてくれたようで、じわじわと嬉しさが増していった。