クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
あまりの嬉しさに、しばらく動くことができなかった。
でも、と私は思い直す。
葛城さんにちゃんと食事をさせようと決意をしたんだ。三辺さんからもそう託されたような気がしたから、それをきちんと守る。
私はゆっくり顔を上げて、にっこりと葛城さんに笑いかけた。
「ダメですよ。ちゃんと飲まないと咳が止まりませんし、治るものも治りませんから」
おじいちゃん先生から処方された薬を袋から取り出すと、それを見た葛城さんは心底嫌そうな顔をした。不機嫌とは違う、子どもっぽい表情に思わず口元が緩む。
「いつも冷静な葛城課長がお薬が嫌いだってみんな知ったら、どうなるんでしょうね?」
「……いちいち言うなよ」
「言いませんよ」
「いや、口と目が笑ってるだろう。絶対、言いたくてうずうずしてる」
「……そんなに知られたくないんですか?」
私が訊いただけでムッとしたのか、プイッとそっぽを向く。本当に子どもみたいで、ますます笑ってしまう。
「大丈夫ですよ。私は絶対、喋りませんから」
咳止めシロップも食後の服用と知って、まずはなにか食べさせないと、と彼に食べたいものを訊くと「果物」とボソッと返ってきたから。保冷バックからすりおろしリンゴを取り出す。
器に入れスプーンと共に渡せば、ゆっくりと口にする。果汁が喉に染みるのかたまに顔を歪ませながら、無事に完食してくれてほっとした。
「それじゃあお薬を置いてきますからちゃんと飲んでくださいね。ごまかしちゃダメですよ。ね、チョコ」
「ワン!」
我が家の忠犬はしっかりと監視を約束してくれ、葛城さんは「オレの立つ瀬がない……」と悲哀に満ちた呟きを溢した。