クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
彼に抱き寄せられたのだ、と理解したのは目元を指でこすられてから。
「肌が荒れてるし、クマが出来てる……寝てないのか?」
「……あ」
そういえば、今朝まで徹夜して葛城さんを看病した。二晩続けてはさすがにキツかったけれど、これくらいはしなきゃと眠気を振り切ったんだけど。
「だ、大丈夫です。昔から眠らなくても平気なんで。今晩はちゃんと寝ますし、明日はメイクでクマを誤魔化しますから」
「全然大丈夫じゃないだろ、今から寝ろ」
命令の様に言われても、私は首を横に振るしかない。
「これからお風呂の用意して、お洗濯もしますし。チョコの散歩とか……やることはたくさんあります。夜はちゃんと寝ますから……」
それに、と私は密かに心の中で思う。実は、葛城さんの蔵書の中でビジネス関連の書籍が幾つかあり、それを使って仕事に関わる勉強を始めてる。今はまだまだ役に立たない新人だけど、少しでも早く彼の力になりたくて。
その勉強を部屋へ帰ってこっそりするつもりだったけれど。なぜか、葛城さんは眉を寄せて私の頬を指で撫でた。
「新聞のインクがここについてる」
「え……」
「部屋へ戻っても、眠らないつもりだろう?」
今朝は葛城さんの読み終えた経済新聞をこっそり勉強の為に使っていて、うたた寝した時に新聞に顔を突っ伏してたんだけど。やっぱり解るの? と戦々恐々とした。
何もかも見透かされそうな葛城さんの焦げ茶色の瞳が、急に近づいてきたかと思えば。軽く唇を啄まれた。
「え……」
ヒョイと腰を抱き寄せられたかと思えば、いつの間にかベッドの上に横たえられていて。彼が覆い被さるという不穏な体勢になってた。