クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
December~気付いた気持ち
――葛城さんが好き。
そう気付いたところで、その気持ちを告げるつもりはない。
私はただのペット……だから。
いつか近いうちに別れはくる。私が住む先を見つければ、彼は何の未練もなく私とサヨナラするだろう。
その事実が辛くないと言えば嘘になる。
でも、こうして好きな人の近くにいられるだけでも奇跡的なこと。
今はただ、少しでも長くそばにいたい。そう願うだけだった。
はぁっと息を吐けば微かに白く、すぐに溶けて消えゆく。
わずかに残っていた秋の虫の音もすっかり無くなり、街路樹の木の葉もほとんど落ちて足元でカサカサと鳴る。
頬を撫でる風は確実に冷たさを増して体温を奪う。寒くて両手に息を吹きかけた後、空を見上げた。
12月。冬のはじめの空は、清々しいまでに澄みきってた。
「ワン!」
いつものお散歩コースで歩くチョコは1ヶ月より体も大きくなり、丸々としてすっかり仔犬らしくなってた。
好奇心旺盛であちこち寄っては何かを追いかけたり、土を掘り返したり。気になるものをくわえて行方不明になりかかる。そのやんちゃぶりも日に日に増して、ただのお散歩も立派な運動になってる。
今も、尻尾を振りながら一目散に走る走る。
「チョコ! 待ちなさいって……」
息を弾ませながらも、リードを離すまいとしっかり掴む。川沿いの堤防から川岸に向かって駆け降りるから、斜面を転ばないように着いてくのが大変だった。