クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
上下関係を教えるリードウォークが全然できてない。今が躾の大事な時期なのに。
「チョコ、待て!……待ってってば!」
オヤツをちらつかせたりリードを軽く引いても、全然言うことを聞いてくれない。毎朝の30分の散歩はハードな運動と化してます。
「ワン!」
「チョコ、あんまり吠えないで……あたっ!」
途中で何かにつまづき、思いっきり前のめりに転んだ。幸い柔らかい草むらだったからよかったけれど……。
「痛……また鼻打った……」
最近私の鼻には災難ばかりだ。
ただでさえ低いのに、転んだりぶつかったりして余計に低くなってる気がする。
平々凡々な容姿だからこれ以上悪くなりたくないんですけど……。
「あたたぁ……こら、チョコ! 知らんぷりして。薄情犬~」
「ワン!」
意味が解ってるのか解ってないのか、チョコは嬉しそうに尻尾を振る。倒れた私の匂いをクンクン嗅いでるし。
しまいには、手をはむはむと甘噛みしてきた。最近噛みついてくることが増えてきたから、ここでビシッと躾ないと。
「こら、チョコ! 待て!」
「ワン!」
「待てって言ってるのに……いたたっ!」
アホなやり取りをしているうちに、ぴゅうと風が吹いてきて身体が震えた。そろそろ木枯らしってとこかな。
「チョコ、そろそろ帰ろうか……あれ?」
鈍い音がしたからか、チョコがそちらへ向かって駆け出す。着いた先には、紺色の塊があった。