クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
(TPPは国内の農業にかなり影響がある……か。やっぱり取り引きにも関わってくるんだろうなあ)
休憩室では新聞や雑誌が自由に読めるから、膝の上で経済新聞を広げながらもそもそとお弁当を頬張る。
家では葛城さんの読み古しや蔵書で勉強できるけれど、会社ではそうもいかない。葛城さんが取ってない種類の新聞もあるし、毎日読むだけでいろいろ知れて面白かった。
「よ! 今日も弁当美味そうだね~」
ふと目の前が陰って顔を上げれば、ニコニコ笑顔の加藤さん。褒められれば悪い気がしない単純な私は、彼に向かってランチボックスを差し出した。
「よかったらどうぞ」
「え、マジで良いの? やり~」
パッと顔を輝かせた加藤さんは、遠慮なくいっただきま~す! と手を伸ばして一つ掴むとすぐさま頬張った。
「ん、美味い! 加納ちゃんの天むす、めっちゃ美味いやん……イテ!」
ポコンと軽く音がして加藤さんが頭を抱えると、富永先輩が鼻息荒く彼に突っかかった。
「こら、加藤! 加納さんのお弁当を独り占めするな!アタシだって最近食べてないのに~シクシク」
なぜか泣き真似をする富永先輩に、いたたまれなくなってランチボックスを差し出した。
「あの……よかったら富永さんも召し上がりますか?」
「え、良いの? ありがと~催促したみたいで悪いわね」
嘘泣きを止めた先輩は、遠慮することなく天むすを摘まむと一口で食べてしあわせそうな笑顔をする。それだけで、こちらもしあわせな気分になれた。