漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
思わずつぶやいたエルミドに、ファシアスは込み上げてくる笑いを押さえながら返した。


「なんだと?アンバーに『御力』は使えないはず…」

「ああそうだ、アンバーはもう『御力』は使わない」


使うのは『力』。
自分の中から湧き出てくる、自由で無限の『力』。
アンバーだけに許された尊く清らかな『力』だ。

いつの間にか肩の傷も癒えていた。
アンバーの『力』をまた得て、さらに自分も強くなるのを感じる。
ファシアスはニッと不敵な笑みを浮かべた。


得体の知れない焦りを感じ、エルミドは再び魔のつぶてを飛ばした。
ファシアスは剣でそれをひとつ残らず弾き返した。
いまいましげにわめいて、エルミドは次から次に作っては飛ばしていく。


「そんなに魔力を使えば、おまえの身が持たないぞ」


魔力はそれを扱う者の負の感情を食って発動される。いわば心を餌として犠牲にしているわけで、与え過ぎれば当然、心が消耗していく。

エルミドの顔がげっそりとしていく。
まるでひどく辛く苦しい経験を負ったかのように疲れ果てた顔をしている。機械のように魔のつぶてを発射し続けていく様は、病人が弱った身体に鞭打って足掻くような憐れさがあった。


「もうやめろ!これ以上酷使すると、おまえの心が死ぬぞ…!」

「うるさい!ならば俺にひれ伏せ!おまえごときがこの俺に歯向かうなど、あってはならないことだ!」


狂気がかったように叫ぶとエルミドは魔球を生み出した。先ほどよりもずっと大きい。
ぜぇはぁと息をしながら、ほとんど亡者のように生気を失った態で魔球を投げ放った。


「死ね!」
< 100 / 128 >

この作品をシェア

pagetop