漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
こんなものを受けて無事でいられるか、流石のファシアスも背筋を凍らせた。
しかし耐えなければ固唾をのんで見守っている兵たちまで巻き込むかもしれない。

ファシアスはかまえた。
光は、まだファシアスを包んでいる。


(守ってくれよ『聖乙女』…いや、アンバー!)


魔球を剣で受け止めた。ものすごい重圧。先ほどの比ではない。
腕の傷は癒えたが、なすすべなく地面との間に挟まれる。禍々しいまでのエルミドの負の感情が、魔力となってファシアスの肌を焼き、肉を押し潰そうとする。


「ぐっ…っぅうぐ…!」


視界が真っ暗になった。
灼熱が全身を包み。重圧に潰され意識が途切れそうになる―――が、


ふと、身体が軽くなった。


黒い視界に光が差し込み、あっという間に白い世界が広がった。
そして、浮かび上がるように白い手が伸びてきた。やさしい温もりを感じさせる小さなその手には見覚えがあった。
なんども握っては、けして離したくないと焦がれた美しい手…。


「アンバー…」






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