漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
でも、実際に試したことなどないから分からない。
試す気も起きない。そんなことをして、もし『御力』が弱くなってしまえば…この国は誰が守ればいいというのか…考えただけで不安だったが、どこか挑発するように見詰めてくるファシアスの態度がくやしくて、アンバーは意地を張った。


「ふん、ばかにしないで。私の『御力』は絶対よ。どんなことがあったって、この国は私が守ってみせる」

「なら」


強気に胸を張ってみせたアンバーを、突如ファシアスがぐいっと引き寄せ抱き止めた。そして細い顎を指先だけで強く持ち上げた。


「一緒に行くか?外の世界へ」

「え…」

「この宮から連れ出してやろうか、俺が」


(…なんて冗談を言うの…?)


手を払いのけようとしたアンバーをさらに固く抱き寄せ、包みこむように身体を押し付ける。けして逃がさない、とのばかりに。


「…そしてそのまま、どこか遠くの森深くに住まわせて、誰も知らない場所に閉じ込めて…永遠に俺の…俺だけのものに」


してしまおうか―――。


独り言のように囁かれた言葉は低くて重くて、アンバーは思わずゾクリと背筋を震わせる。が、『聖乙女』たる矜持を貫いて、澄み切った新緑色の瞳でにらみつけた。
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