漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「束の間なら許されるかもしれない。でも、おまえが言うそれは「清浄なる宮で『御力』を高め国を守る」という『聖乙女』の務めを放棄させるのと同じこと。どういう意味か解かって言っているの?イロアス将軍」

「…」

「そのような民を裏切る行為など私は断じてできない。私はこの宮を離れるわけにはいかない」


その瞳に引きこまれるようにファシアスは視線を変えずにいたが、ふっと小さく笑うとアンバーを離した。


「冗談に決まってるだろ。そんなに怖い顔して、真に受けなくてもいいだろ」

「…冗談にしては過ぎるわ!」


アンバーは胸がジクジクと痛むのを感じた。
ファシアスのその微笑はどこか悲しげで…自分まで悲しくなる気がした。
< 19 / 128 >

この作品をシェア

pagetop