漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
ファシアスのことはごく一部の高位の神官―――アンバーが本当に信頼を寄せた神官しか知らないはずなのに…。


「曲がりなりにも私はこの国の王太子。小さな宮で飼う愛しい小鳥のことはよく把握しておりますゆえ…。宮は『聖乙女』の『御力』を守る聖なる場所。浄化された者でないかぎり、そこへの訪問は王族であっても簡単には許されない。…なのに貴女は一介の武人を受け入れ続けた。血と埃にまみれた穢らわしい人間を」

「…ファシアスは私と会う前は必ず長い禊に入っております…!それに…ファシアスと会った後であっても、『御力』は衰えることはなかった。…今日は…今日は異常事態であって」

「言い訳だな。嘆かわしい限りだ、『聖乙女』がそのような無責任なことを言うとは。いや、愚かと言う方が合っているか。…いい加減、この事態は神からの罰だと認めたらいかがですか?『私は穢れた武人と不貞をはたらき、国と民を顧みなかった反逆者だ』と」

「っ!!」
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