漆黒の騎士の燃え滾る恋慕


豪奢な天井が揺らめいた。
エルミドが玉を転がすようにねっとりとアンバーの首をなぞり、肩にかかる衣服に触れた。
その冷たい指先に震えると同時に、涙がこめかみを走った。
その熱い雫が伝い落ちた耳朶に、声が聞こえた気がした。

部屋の外から騒がしい物音と、怒鳴り声がする。

エルミドも異変に気づき、アンバーの肌から身を起こして扉を見やった。
部屋の外には近衛兵を見張りにつけ、なにがあっても部屋には誰も入れるなと命じている。もちろん騒ぎを起こすのも言語道断だ。
騒ぎはほどなくしておさまった―――かと思うと、急に扉が開いて、背の高い男が駆けこんできた。


「…アンバー!」


アンバーは目を疑った。だが、漆黒の髪と衣服が凛々しいその姿は、間違いなくファシアスだった。
らしからぬ切迫とした表情を浮かべているその顔は、エルミドに寝台に押さえ付けられているアンバーを見た瞬間、凍りついたように強張った。
が、半瞬後、事態は一変した。
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