君にまっすぐ
賢介と会ったあとの週も孝俊が地下駐車場に現れることはなかった。
あかりは孝俊が立場を考えた行動をとっているのだと、会えない寂しさに見ないふりをして納得することにした。



ブロロロロロロ…

来た!

「おはようございます、大塚様。今日も1日お預かりいたしますね。」

「よろしく頼むよ。」

60代のこざっぱりした優しげなおじ様があかりに微笑み、駐車場をあとにする。
やっぱり素敵!と思いながら今日の白オルディさんに思いを馳せる。
やっぱり白いと黒アルディさんと違って柔らかい印象になるなーとニヤついた顔で休憩のため事務所に戻った。

「今日は、ご機嫌ですね。森山田さん。」

「はい!白オルディさんに会えたので!」

「白オルディさん…大塚様の車ですね。」

「はい。黒もいいですけど、白も素敵ですよね〜。」

ニヤけながらオルディを想うあかりを田中は微笑みながら見つめる。

「最近、元気がないようでしたから安心しました。」

「そんな!私はずっと元気でしたよ?」

「ええ、カラ元気でしたね。」

ニコッとする田中にこの人にごまかしは効かないと落ち込む。

「さすが、田中室長ですね。」

「そうですか?」

「ええ、何でもかんでも見透かされているようです。」

「んー、何でもかんでも見透かすことはできませんが、森山田さんの黒オルディと白オルディへの見る目が違うのはわかります。」

「え!?」

「オルディが一番好きだと言っていましたね。白オルディを見ても笑顔になっているのですが、メロメロ度とキラキラ度が黒オルディの時とは違います。」

「あれ?お気づきではなかったですか?黒オルディを見ている時の森山田さんは恋している顔でしたよ。黒オルディに乗って以降は特に。」

「そ、それはオルディの中でも黒が一番好きだからで。」

「それもあるでしょう。ですが、本当にそれだけですか?」

「…。」

なんと答えて良いのかいい言葉が浮かばず、あかりはうつむく。

「おっと、見回りの時間です。それでは。」

田中がいなくなったあともあかりはうつむき立ったまましばらくそこから動かなかった。
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