次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
本家の当主に急に呼び出された事実も、駿介の物言いも、良くない状況だと理解した敏彦さんがオロオロと視線を彷徨わせだす。

「母さんが呼び出しって、なんでだよ」

「もちろん、うちの大事な文香を傷付けるようなマネをしたからだよ。それも分からないボンクラがっ!」

迷子みたいに不安げな敏彦さんに駿介の容赦ない言葉が刺さる。

「國井って名前に胡座かいた、この勘違い野郎がっ!一族に生まれたってだけで何したって許されるなんて本気で思ってるなら、今すぐ一族から追い出してやる」

「お、追い出すって、そんな!そんな事、絶対に母さんが認めないに決まっ‥‥」

「お前の母親がどんなにゴリ押しが得意だろうと、今回だけは許すわけにはいかない。お前達がどうなるかは、後日改めて伝える」


厳しい表情と声で堂々と言い切った駿介は遠巻きに見つめていたスタッフを呼ぶと、表情を崩した。

「騒ぎを起こして、申し訳なかった。それから、他のお客様にもご迷惑をお掛けしたので、ホテルからのお詫びを手配してくれるとありがたいんだが、頼めるかな?」
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