次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「ひどいと思う‥‥」

「そうか?これ以上なく優しくしたんだけどな」

ご機嫌な駿介はさらりと言い切って、シャワーで濡れた髪をガシガシと乱暴に拭いているけど、私はソファに座ったまま、濡れた髪も拭かず、渡されたタオルを手にぷうっと頬を膨らませて不機嫌を猛烈アピール中だ。

「どのへんがひどいんだよ?」

「だって私が恋愛初心者だって知ってるのに、昨夜だって、あんな‥‥しかもさっきだって恥ずかしいって言ったのに一緒にシャワーとか‥‥‥‥とにかく、展開急ぎ過ぎっ!」

「俺のせいじゃないだろ、それ。シャワーだって文香が腰が立たないって言うからだし。だいたい、俺はもっとゆっくり進めるはずだったって、昨夜も言ったよな?それなのに文香が斜め上いく妄想した挙句に敏彦なんかと結婚しようとするから」

はぁっとわざとらしい大きなため息を吐いた駿介がにやりと笑う。

「だから俺も仕方なく、だな」

「仕方なくって人が処女相手にあんな‥‥‥」

言いたい事は沢山あるけど、恥ずかしくて言葉に出来ない。真っ赤になった顔で睨むのが精一杯なのに、駿介は私を揶揄う余裕まである。

「あー、まぁそれも、原因だな」
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