次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「はぁ?」

「だってお前、こないだ経験あるみたいな事言ってたくせに、キスも全然慣れてなくてさ。この先は絶対初めてだなって思ったら、なんか止まらなくなったっていうか」

「ーーーやっぱりヒドイっ!」

投げつけたクッションを軽くかわした駿介は、そのまま私に近寄り、髪を優しく拭きはじめた。

「まぁ、機嫌直せよ。そろそろ朝食も届く」

節ばった大きな手は、慈しむように大切なものを扱うように優しく髪を拭いてくれる。

この手に昨夜、大切に触れられた事を思い出して、眉尻が下がる。

「ね、内緒にしようね」

「ん?」

「二人で泊まった事、内緒にしよう」

「誰に?」

「誰にって、みんなにだよ」

「なんで?」

「なんでって‥‥‥恥ずかしいから、かな」
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