次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
二人共、昨夜の服を再度着ている。スーツ姿の駿介はもちろん、私だっておかしな格好ではないけれど、セレモニーワンピースはビジネスの場には相応しくない。

「あ、じゃあ、着替えに帰ってもいい?」

「ダメだ」

「でもっ!こんな格好じゃ、相手の方に失礼になっちゃうよ」

「そんな事はないさ。なんなら喜ばれる」

「え?そんな訳‥‥‥」

「いいから!ほら、行くぞ。用意は出来たのか?」

自身もジャケットを羽織り完璧な姿で私の身支度を待たれては、急ぐしかない。

「待って。後五分!」

「三分だ。急げよ」

意地悪な笑みを浮かべてにやりと片方の口角を上げた駿介は、すっかりいつも通り。私も必死にいつも通りの軽口をたたく。

でも「好き」とはもう言えない。それはもう、冗談や軽口じゃないってバレてしまったから。


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