冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
――どうして……ディオン様が、ここに……?
「フィリーナ? ここではないのか」
聞き間違いかと思ったのに、たしかにフィリーナを呼んでいる澄んだ声。
さっきまでとは違うものが、指の先までを震わせる。
薔薇の陰からうかがった姿は、月明かりに照らされてはっきりと目の前に見えた。
「……たしかに、ここに来たようだったが……」
ひとりごち身を翻されるディオンを驚かさないよう、フィリーナは月明かりに身を晒しそっと声を掛けた。
「……ディオン様……わたくしなら、ここに」
震えている指先を落ち着かせるように胸元で握りしめ、ディオンの前に出る。
もしかしたら、また夢を見ているのかもしれないと思ったけれど、目の前にいる高貴な人はたしかにフィリーナを見つめるなり、ほっと息を吐かれた。
「やはりここだったのか」
遠く目を細めなければいけない世界にいた人が、どういうわけか今目の前にいる。
喉の奥で大きく脈を打つ心臓が、熱い血を送り出し顔を火照らせた。
「フィリーナ? ここではないのか」
聞き間違いかと思ったのに、たしかにフィリーナを呼んでいる澄んだ声。
さっきまでとは違うものが、指の先までを震わせる。
薔薇の陰からうかがった姿は、月明かりに照らされてはっきりと目の前に見えた。
「……たしかに、ここに来たようだったが……」
ひとりごち身を翻されるディオンを驚かさないよう、フィリーナは月明かりに身を晒しそっと声を掛けた。
「……ディオン様……わたくしなら、ここに」
震えている指先を落ち着かせるように胸元で握りしめ、ディオンの前に出る。
もしかしたら、また夢を見ているのかもしれないと思ったけれど、目の前にいる高貴な人はたしかにフィリーナを見つめるなり、ほっと息を吐かれた。
「やはりここだったのか」
遠く目を細めなければいけない世界にいた人が、どういうわけか今目の前にいる。
喉の奥で大きく脈を打つ心臓が、熱い血を送り出し顔を火照らせた。