冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「お話が過ぎます。今夜はもう遅い。お休みくださいませ」
クロードの声に、レティシアの瞳はフィリーナの後ろへと外される。
労いの言葉にならい、フィリーナも「失礼いたします」と頭を下げて踵を返した。
威圧的な気配に目を向けられず、うつ向いたままクロードの前を通る。
ふと視界の端に迫った存在感が、フィリーナを威圧してきた。
「邪魔立てするな。余計なことをすれば、貴様の身もただでは済まないと覚えておけ」
お腹の底に響いてくるような低い声は、小娘一人を脅すには十分だ。
だけど、はたと気づく。
クロードの装いがとても身軽でいるということに。
面まではなくとも、ダウリスもイアンも、護衛に付いている間は、胸当ての甲冑くらいは身に着けているのに。
「失礼いたしました」
過った違和感に胸騒ぎを覚えるものの、深く頭を下げて部屋を出る。
音もなく閉めた扉の向こうでは、二人はどんなことを話すのだろう。
あるいは、クロードはこのままこの部屋の中で、朝を迎えるなんてことが、ありえたりするのだろうか。
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クロードの声に、レティシアの瞳はフィリーナの後ろへと外される。
労いの言葉にならい、フィリーナも「失礼いたします」と頭を下げて踵を返した。
威圧的な気配に目を向けられず、うつ向いたままクロードの前を通る。
ふと視界の端に迫った存在感が、フィリーナを威圧してきた。
「邪魔立てするな。余計なことをすれば、貴様の身もただでは済まないと覚えておけ」
お腹の底に響いてくるような低い声は、小娘一人を脅すには十分だ。
だけど、はたと気づく。
クロードの装いがとても身軽でいるということに。
面まではなくとも、ダウリスもイアンも、護衛に付いている間は、胸当ての甲冑くらいは身に着けているのに。
「失礼いたしました」
過った違和感に胸騒ぎを覚えるものの、深く頭を下げて部屋を出る。
音もなく閉めた扉の向こうでは、二人はどんなことを話すのだろう。
あるいは、クロードはこのままこの部屋の中で、朝を迎えるなんてことが、ありえたりするのだろうか。
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