冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「フィリーナ」
「はい」
「そういうところだ」
「はい?」
何のことを言っているのかがわからず首を傾げると、呆れたような溜め息が大いに吐き出された。
「ずかずかと入り込んでくるな。
このまま兄が目覚めなければいいと思ってしまうだろう」
「そっ、そんな! それはいけませんっ!」
「わかっている。僕も兄には、早急に目覚めてもらいたいと思っている。
なぜ僕の剣を持っていた剣で受けなかったのかと問わなければ気が済まないし、謝罪もしなければならない。それに……」
また距離を縮めるグレイスは、フィリーナ手から桶を取り上げ、水の張る石の囲いに手をつく。
ぐっと顔の距離を詰められると、碧い瞳がゆらりと怪しげに揺らめいた。
「いつまでも寝過ごしている兄から、……お前を、奪ってしまいたくなるからな」
「……っ!?」
見目麗しい顔が間近に来るのはもう何度もあったことなのに、グレイスの怪しげな雰囲気が、胸の免疫を吹き飛ばす。
平気だった鼓動が大げさに心臓を叩き、顔が瞬く間に急騰した。
「はい」
「そういうところだ」
「はい?」
何のことを言っているのかがわからず首を傾げると、呆れたような溜め息が大いに吐き出された。
「ずかずかと入り込んでくるな。
このまま兄が目覚めなければいいと思ってしまうだろう」
「そっ、そんな! それはいけませんっ!」
「わかっている。僕も兄には、早急に目覚めてもらいたいと思っている。
なぜ僕の剣を持っていた剣で受けなかったのかと問わなければ気が済まないし、謝罪もしなければならない。それに……」
また距離を縮めるグレイスは、フィリーナ手から桶を取り上げ、水の張る石の囲いに手をつく。
ぐっと顔の距離を詰められると、碧い瞳がゆらりと怪しげに揺らめいた。
「いつまでも寝過ごしている兄から、……お前を、奪ってしまいたくなるからな」
「……っ!?」
見目麗しい顔が間近に来るのはもう何度もあったことなのに、グレイスの怪しげな雰囲気が、胸の免疫を吹き飛ばす。
平気だった鼓動が大げさに心臓を叩き、顔が瞬く間に急騰した。